「麝香姫の恋文」
赤城毅・作、講談社NOVELS・刊
一言で言えば・・・ああ~惜しい!という感じでした。
舞台は昭和初期。
主人公は美しいものばかりを狙う美貌の怪盗・麝香姫。
ライバルは秀才の一高教師にして素人探偵の間宮諷四郎。
なんとも昭和初期ローマンスな設定です。
話の内容はとしては、麝香姫が富豪の娘、神宮寺真奈を奪おうと
する(本当は、真奈に幸せをもたらすため行動する)、
ということがメインです。あと、諷四郎との駆け引きも
メインと言えばメインですが、サスペンスや推理ものという
観点で言えば、まったりしすぎな印象です。
そういうのが昭和初期らしいといえばそうなのかもしれませんが。
「百合」的には、もちろん麝香姫と真奈の関係なのですが・・・
これがどうも煮え切らないのです。真奈は麝香姫のことを
お姉さまと言って慕っているし、麝香姫も真奈のことを美しいと
思うからこそ、幸せを願ったのだろうけど、なんだか、
微妙に絡まないんですよね。
麝香姫が真奈のことをどう思っているのかの描写が少ない
というのが絡まない原因だと思うのですが、それ以前に
作者が「百合」として一歩退いている印象もあるのです。
# 非常に良さげなシーンもあるにはあるのですが。
個人的には、妙齢の美女である麝香姫が、たまに一人称を
「ぼく」にするのがかっこよくて好きなのだけど、結局最後まで
諷四郎の手の上で踊らされていた印象もあるし・・・。
どうも、探偵ものとしても、「百合」としても中途半端な感じが
するのです。
それでも、最後まで麝香姫が真奈をさらったまま、とか
真奈が最後まで麝香姫に想いを寄せているという描写がある
なら、おすすめ度は良い点をつけられたのですが、
それもないですし・・・。
やはり、全ての敗因は、作者が「百合」嗜好を持っていなかった
ことに尽きますね。
おすすめ度は・・・
■■■■■■■□□□
としておきます。
作者は、子供のころから江戸川乱歩などに影響されてここまで来た
という感じです。もしそうなら、全小中学校の図書館に「花物語」
を置くべきです!いまこそ教育改革の必要性を・・・!(笑)
返す返す惜しい作品でした。
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