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2006.02.09

「サグラダ・ファミリア[聖家族]」(1998)

中山可穂・著、朝日新聞社・刊

さて、早速読んでみました。購入した8冊の内
一番最初に発表された作品です。

第一印象は・・・前半は典型的なビアンものの作品
だと思いました。しかし、読了するとビアンもの
独特の重さを不思議と感じませんでした。
軽い話ではないですが、にも関わらず、最後には
カタルシスに近い印象さえ持ちました。

お話は、かつては天才的だったピアニスト・響子と
透子の出会いから始まります。
響子は(ビアンものとしては)典型的なキャラクター。
ハイソで芸術家肌、真性レズビアンで手も早い(汗)
そして子供嫌い

個人的には、こういうキャラクターをハード・ビアン
と呼んでいます(汗)
レザーのコスチュームなんていらないのです(汗)

閑話休題。

一方、透子はノンケらしく、人なつっこく、子供好き。

この二人が惹かれあうのです。

レズビアンカップルは子供をつくれない。前半は
同性愛を扱った作品として普遍的な葛藤が描かれます。
また、この部分ではセクシャルな描写がありますが、
巧いと思いました。かなりエロチックな描写なのですが
ポルノ的な惰性を感じさせないのが良いですね。

そして、二つの事柄がこの作品を大きく転換させます。

透子の出産。
そして、透子の死。

透子は響子の知らない所で子供を作っていたのです。

これだけなら、ドロドロの展開を予想して引いて
しまうでしょうが、この後の展開が実に巧い。

透子の死に打ちひしがれながら、透子の残した子供と
正面から向き合わなければいけなくなる響子。
このあたりの淡々とした、時に激しい心理描写は
見事だと思います。グッときます。

そして徐々に、家族とは何か、という疑問に集約
されていきます。こういうのも文芸作品的で良いです
ね。普通のビアンものには、ビアン世界の外でも
通用する普遍的な要素が存在しない場合もありますが、
その点を押さえているのは巧いです。

最初のうち、響子というキャラクターは何だがギラ
ギラしていて取っつきにくいキャラクターですが、
後になるにつれ、良い具合に変化して行きます。
透子が死んでも愛人・カノン(ちなみに日本人で人妻)
をつくるようなヤツですが、なんだか憎めないし
格好良く思えるのが不思議です。

あと、この作品って、重いところも多いですが、
茶目っ気も多いのです。そういう全体的なバランス
感も、良好だと思います。

ということで、おすすめ度は
■■■■■■■■□□
とします。

響子は30代だし、アダルトな内容だし、正直言って
普通の「百合」好きの方におすすめするのはため
らわれます。(それで8点にしていますが)
しかし、甘々「百合」に胃がもたれたら、お口直しに
ちょうど良いと思います。

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コメント

こんにちは。

いや~懐かしいですね~。
サグラダ・ファミリア!僕は中山先生の作品
ではこの本が一番好きです。

この本が出た頃は、百合界(^_^)は現在じゃ
考えられない不遇時代だったので、いつ発売
されるかわからないレズビアン小説を首を長
くして待っていたものです。(T_T)

コメントありがとうございます。

>この本が一番好きです。

他の作品はまだ未読ですが、判ります。
響子って遊び人なだけに、透子への想いの
深さが却って強調されているんですよね。

>この本が出た頃は、百合界(^_^)は現在じゃ
>考えられない不遇時代だったので、

私もそうです。でも、私の場合、ライトな
メディアで「百合」分をこすように摂取して
いた割合の方が多かったです。
なぜ当時、中山可穂を読まなかったのか今
考えるとよくわかりません。

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