「夏の悲歌」
早見裕司・著、ジグザグノベルズ・刊です。
「百合こころ」でも感想を書いた、「精霊海流」
の早見裕司氏の作品です。
読後の第一印象は・・・今回も友情ものでした。
妄想しだいでは「百合」と思えないこともないの
ですが、それにしてもバッドエンドです(汗)
さてお話しは・・・土着臭のある片田舎が舞台です。
中学生の紗英と一子は親友どうし。紗英は霊感のような
能力があり、一子は物事を合理的に考える性格です。
また、紗英は里中先輩(♂)に恋心を抱いています。
夏を前にして、紗英たちと同じ学校の、似たような
風貌の男子が3人神隠しにあってしまいます。紗英と
一子はこの事件に関ってしまうのですが、物語は思い
がけない方向に・・・
「百合」的には紗英と一子の親友関係です。
紗英は先輩男子を恋しているし、一子はそれを積極的に
応援します。これだけみたら「百合」の入る込む余地は
ないかもしれません。
しかし、時よりみせる一子の寂しげな描写を、どう読む
かによって、この作品を「百合」と捕らえるかそうで
ないかに分かれそうです。
逆に言えば、「百合」だと確証が持てる描写はほとんど
ないのです。ストレートな「百合」を求める方には
おすすめできない作品であることは事実です。
前作「精霊海流」もそうですが、この作家は女の子同士
の友情話が本当に好きそうで、この点では良く描けて
いると思います。
あと、さすが新書を書く作家だけあって、文章のテンポ
は非常に良いです。しかし、テーマがテーマなので
テンポが良すぎるのではという気もします。
紗英の「霊感」が物語の解決に大きく関ってくる割には
「霊感」の説得力が弱いような気もしますし。
最後に、前作「精霊海流」を読んだだけでは判らなか
ったのですが、この作品を読んでほぼ確信しました。
この作家には「百合」嗜好はないな、と。
「百合」嗜好のある作家なら、一子の片思いだった
という確かな証拠を表現すると思うのです。
ということで、おすすめ度は・・・
■■■■□□□□□□
とします。
友情ものとして評価した場合の最大値と言えそうです。
早見裕司氏の他の作品の感想はこちら。
●「精霊海流」
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