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2009.12.15

「きもちのかたち」上

桜井家・作、コスミック出版・刊

今年の「百合」シーンを語る上で欠かすことはできない
作品。それはこの作品でしょう。
コスミック出版という「百合」的には後発の出版社から
同人誌で発表済みの作品とはいえ、これほどのボリュー
の漫画が出てくるとは!

実は、お恥ずかしながら"桜井家"というサークルは存じ
ませんでした・・・
北尾タキ氏とみとうかな氏の二人サークルなのですね。

さて、内容は・・・北尾タキ氏とみとうかな氏が1本ず
つ(各3話ずつ)、学園ものを描いています。

読後の第一印象は・・・確かに商業作品と比べると漫画
としての完成度は高くない部分もありますが、「百合」
スピリッツは「百合姫」や「つぼみ」にも負けていない

と思います。感情表現がストレートで敏感な感情表現は
商業誌ではやりにくいかもしれません。

「TAKI PART」#1~#3
北尾タキ氏が担当している3話です。主人公・後藤さん
は過去に同性に恋い破れた経験がある女の子。榊さんは
後藤さんに猛烈にアタックしてくる女の子。この二人の
織りなすラブストーリーです。

なんと言っても後藤さんの心理描写がとても良いです。
思春期特有の不安定な心の揺れ動きが、商業作品と比べ
ても鮮烈に描かれていると思います。

なんというかプロ作家的な虚構としての経験ではなく
作者の実経験に近いのでは?と思わせるような生々しさ
が各所にあります。

例えば(「百合」とは関係ないですが)、バスケの試合で
相手の選手に自分の学校を悪く言われて、それに発憤す
るエピソードがあるのですが、後藤さんの心の動きに若
者のリアルさのようなものを感じました。
(トシヨリですね(汗))

もちろん、「百合」的にもぐぅっ!とくるような切なさ
が表現されています。

ただ、残念なのが絵柄が受け線ではないという点だと
思います。この絵だけで敬遠されたら・・・と思うと
残念ですよね。
でも、これだけのページ数を描ける人なので、そのうち
上達するでしょう。それに、「百合」作品は絵より
「百合」スピリッツ
だと思いますし。

「KANA PART」#1~#3
みとうかな氏が担当している3話です。お話はさつきと
架乃のラブストーリーです。

みとうかな氏は絵的には可愛い感じで、内容的にも
「TAKI PART」よりは明るい印象です。
でも、同性が好きな自分をトカゲになぞらえて、他人
との境界線を引いていく、というインスピレーションは
とても面白かったです。

あと、髪がボタンに引っかかるとかも上手いなあと思い
ました。可愛い絵なので、一見"甘系"かと思いがちです
が、なかなかスルドイところを突いている作品だと思い
ます。

では、二人のコメントです。

フューシア:わたくしは5点!2作品ともなかなか読ませ
るわね~!「百合」的にはオーソドックス
な感じもするけれど、商業作品を読んでいる時よりも
ココロが敏感に反応したように感じるわ!ああ、わたく
しの多感だった少女の頃を思い出すわ~。下巻も楽しみ。

アレサ:私は3点。確かにコマ移動がスムースじゃ
なかったり、地味な作画だったりと同人誌
的ではあるけど、しっかり描こうとする意識は伝わって
きた。内容もなかなか読ませる内容だったと思う。
「百合」作品としてこの分量の新作を読めることは本当
に少ないので、読んでいる間、充実感を感じた。

総評:●●●●●★★★

コスミック出版の「百合」作品の感想はこちら。
「百合少女」(前編)
「百合少女」(後編)

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コメント

同人誌の再録ではありますが、ほとんど全部描き直しているのがすごいです。
今年は同人サークルの人が商業にも作品を出し始めたのが多い気がします。

コメントありがとうございます。
★まーさま

>ほとんど全部描き直しているのがすごいです。

同人誌にして、このボリュームにしては絵の感じが
変わっていないなあ・・・と思っていたのですが
そういうことだったのですね。本当にスゴイです。
(オリジナルも読んでみたい気がしますが)

でも、本当に良い作品でした。
「百合」の未来は明るいですね!

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