「ひらり」Vol.1(後編)
後編の感想行きます!
●橋本みつる・作「星ちゃん」
親友の延長という感じのお話です。主人公・安藤さんが
自称"男っぽい"星ちゃんを観察するようなお話ですが、
なかなか着眼点が鋭いですよね。本気で思い入れでき
ようになって、初めて星ちゃんの"男っぽさ"が見えてく
るというのは、なにげにリアルな展開です。
親友関係だけど、こういう感情の入れようが「百合」的
だと思います。
●月村菫+ねぎししょうこ・作「手をつなごう」
他の「百合」アンソロと違う「ひらり」の特徴と言えば、
なんと言ってもノベルですよね。短編ですが、しっかり
したノベルが掲載されている「百合」アンソロはかつて
なかった・・・のではないかと思います。
お話は地味でまじめな主人公と、社交的で可愛い義妹を
描いた内容です。キライだと良いながら義妹を観察する
主人公の内面がとても良いですね。
義妹の洋服を着ることになった、ドキドキ感がなんとも
甘切なくて良いです。
やはり「百合」はノベルでこそ本領を発揮する!と思い
ます。今後のノベルの増ページに期待!
●茉崎ミユキ・作「檸檬の」
う~ん。なんとも甘くて、ちょっと切なくてハッピーな
感じが良いですね。実に良い「百合」です。
しかし、甘やかなのに学生ものではないところも、ヒネ
リといえばヒネリで、良いと思います。
同性愛に抵抗がありながらも・・・という嬉し恥ずかし
的な展開もオイシイです。
●スカーレッドペリ子・作「SMILE MAKER」
「百合」というより親友の延長という感じですね。
幼い日と現在の立場の違いを埋められなくて、素直に
なれないというのがちょっとリアルで良いです。
あと、こういうストレートな感情表現って好きだなあ。
個人的にはこういう表現の方が心を動かされます。
●未幡・作「この街に人魚はいない」
ちょっと不思議な転校生との交流を描いた作品。なんと
も淡くて切ないお話です。恋愛感情直前の、心が動かさ
れる感じがとてもよく表現されていますね。
あと、この作品を読んで、「ひらり」の傾向が判った
ような気がしました。
では、二人のコメントです。
第4の「百合」アンソロジーよ!ほとんど
毎月「百合」アンソロが読める時代が来た
のよ!「百合の夜明け」ね!
財布も軽くなるけどね。それはそうと、
「ひらり」だけど、「百合姫」や「つぼみ」
との明確な違いって感じた?
感じたわ!それはズバリ、「淡さ」ね。
「百合姫」や「つぼみ」って表現は違うけ
ど、基本的にガチじゃない。でも「ひらり」に掲載され
ている作品は友情以上、恋愛感情直前、という感じが
したわ。
私も同感。オビに書いている「ピュア百合」
というのはナルホドと思ったよ。
でも、これくらいの淡さの方が逆に等身大
でリアルに感じるのよね。「百合姫」や
「つぼみ」ほどキャッチーではないけど、良い所を狙っ
ているかも・・・と思ったわ。
総評は、私は3点。この淡さって「百合」
の原点だと思うな。最近の濃い「百合」に
慣れていたら、ちょっと物足りないかもしれないけど、
個人的には、こういうのもアリだと思う。
個人的に好きな作品は絵の雰囲気が良い「影慕い」と
ノベルに期待を込めて「手をつなごう」かな。
わたくしももちろん5点!淡いけれど、
ちゃんと甘さも切なさあるわ!う~ん、
「百合」って良いわね~。
わたくしが好きなのは、「一瞬のアステリズム」と
「わたしをすきにならないで」ね!特に「わたしを」の
甘切なさには心を打たれたわ~
総評:●●●●●★★★
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コメント
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虚人ねこ様
『〜ひらり、 Vol.1』の後半レビュー、誠にありがとうございました。
なるほど、“『百合姫』・『つぼみ』との住み分けになるのなら、この淡さも良いのでは?”ですか…。う〜ん、さすがです。私には、全く考え付きませんでした。
今作品、意外な程に“少女漫画・百合”な内容だったので、非常に嬉しく思う半面、何となく“物足りないかな?”とも思ってしまいました。
しかし、虚人ねこさんの、“淡さ”というお言葉を賜り、正に“目からウロコ”の心境であります。
ちなみに、私の“お気に入り作品”は、『一瞬のアステリズム』・『わたしをすきにならないで』・『影慕い』・『原田さんと美咲ちゃん』・『檸檬の』・『SMILE MAKER』、そして今回の“白眉”ともいえるのは、実に可愛らしいお話で、読みながら思わず、頬が緩んでしまった、ノベル『手をつなごう』です。
投稿: 真誠美優 | 2010.05.13 19:14
コメントありがとうございます。
★真誠美優さま
>しかし、虚人ねこさんの、“淡さ”というお言葉を賜り、正に“目からウロコ”の心境であります。
恐縮至極です・・・(汗)
ただ、ちょっと前までガチな「百合」は引く、という
意見も目立っていたので、この“淡さ”なら少女漫画の
延長として楽しめる層もいるのでは?と思いました。
もちろん、個人的にも濃いのから淡いのまで、多種の
「百合」作品を読めるのが嬉しいですが・・・
でも、個人的な予想を言わせてもらえば、「ひらり」も
回を増すごとに濃くなるのでは?と考えています。
(根拠はなく、カンで)
>ノベル『手をつなごう』です。
ノベルがあるのが本当に嬉しいですね。
これからも続いて欲しいものです。
投稿: 虚人ねこ | 2010.05.14 23:28
虚人ねこ様
今作品には、独特の“淡さ”を大切にしつつ、本当に少しずつ少しずつ、“濃さ”を加えていって欲しいな…と、思います。
しかし、何よりも願うのは、一般男性が嬉々とするような、“セクシャル描写過多”な内容には、どうか絶対にならないで…と、いう事です。
ところで今回、私の一番の関心事は、“虚人ねこさんは、ノベル『手をつなごう』を、どう評価なさるか?”でした。実は、“物足りないと、お思いになられるのでは?”と、少なからず心配だったのです。しかし、とても温かい評価を賜った事で、全くの杞憂に終わり、ほっ…といたしました。私も、次回のノベルに期待大です。
投稿: 真誠美優 | 2010.05.15 15:52
コメントありがとうございます。
★真誠美優さま
>“セクシャル描写過多”な内容には、どうか絶対にならないで…と、いう事です。
これも予想ですが、それはないだろうと思いますよ。
>『手をつなごう』
個人的にはノベルというメディアは漫画よりすんなり心
に入ってくるので、多少"薄く"ても"しっかり感じる"よう
ま気がします。
『手をつなごう』は中里一氏の作品のような濃さはないで
すが、心理描写はなかなか上手かったですし、今後も作品
も期待できそう・・・と思いました。
投稿: 虚人ねこ | 2010.05.15 22:50