「君が僕を4 将来何になりたい?」
中里十・著、小学館ガガガ文庫・刊
ラノベの「百合」最後の砦?の本作。4巻(最終巻)の感
想です。
お話は・・・"恵まれさん"である真名の執事になった
主人公・淳子。しかし、真名は"恵まれさん"をやめる
ことを告白します。
真名が去る日が近づく中で淳子の胸に去来する想いと
は・・・。
読後の第一印象は・・・ああ、最後はこう来ましたか。
決してハッピーエンドではないですが、最後まで楽し
めました。いや・・・!
ついに最終巻です。思えばこういう作品をよく最後ま
で出してくれましたよね。
毎回書きますが、小学館ガガガ文庫は本当に偉いです。
電撃なんて目じゃないです!
閑話休題。
最終巻は今まで以上にとっつきにくい内容です。
話者がバラバラ、時間軸バラバラだし、観念的な心理
描写が多めだし、作者独自の哲学がこれでもか!と表
現されているし。
並のラノベ読者は全く付いてこれない内容だと思いま
す。
しかし、これぞ小説です!
# わかりにくいのが「小説」と言っているのではなく
# エンターテイメント性を排除しても、著者の信じる
# 哲学や表現を貫いているという点で。
「百合」的には、最初に書きましたが、普通にハッピー
エンドではありません。だから、甘「百合」が好きと
いう方にはお勧めしにくいです。
考えてみたら、現代の「百合」は「わかりやすすぎ」だ
と思います。私が最初に「百合」に触れた頃は甘系はあ
まりなくて、こういう渋みの効いた作品が多かったよう
に思います。
その頃の懐かしくも味のある「百合」を再現してくれて
いるという印象もしましたね。
ただ、この作品は確かに難解で、私も完全に理解できた
ワケではありません。
だから、この作品は何回も読み直したいという気分に
させられました。こういう気持ちになったのも久しぶり
かもしれません。
「百合」小説の金字塔とも言える、この大作品を世に届
けてくれた、中里十氏と小学館ガガガ文庫編集部に心
から感謝です。
では、二人のコメントです。
わたくしは5点。甘くはないけれど、淳子
ちゃんの内面を考えると、もう、ぎゅー!
って胸が締め付けられるわ~。わたくしはこの痛みも
「百合」を構成する大切な一部だと信じるわ。
中里十先生の次回作にも期待するわ!!
私は3点。いや、本当、最後まで清々しい
ほどの孤高っぷりだったね。現在の「百合」
ブームに一石を投じたと言っても過言ではないよね。
(作者の意図ではないかもしれないけど)
でも、難しいだけではなく、「百合」作品のテイストは
最初から最後まであるのが素晴らしいよね。
普通の「百合」好きには勧めにくいけど、私としてはこ
ういう作品こそ読んで欲しいと思う。
総評:●●●●●★★★
このシリーズの感想はこちら。
●「君が僕を どうして空は青いの?」
●「君が僕を2 私のどこが好き?」
●「君が僕を3 こんなもの誰が買うの?」
中里十氏の多作品の感想はこちら。
●「どろぼうの名人」
●「いたいけな主人 どろぼうの名人サイドストーリー」
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